2026/07/03 19:15

新品なのに、ずっと昔からそこにあったような顔をしている。

Jock Favour(ジョック・フェーバー)の作品を形容するなら、この一言に尽きると思います。

彼はネイティブアメリカンではありません。白人の作り手です。それでも、あえてこの人の作品を選びました。
3世代にわたってアメリカ南西部の文化と関わってきた家に育ち、インディアンジュエリーを売る現地のトレーディングポストで、ネイティブの作家たちの作品に並んで置かれることを許された、数少ない白人アーティスト。その事実が、彼の仕事が現地でどれだけ敬意を払われているかを物語っています。

彼のこだわりは、インディアンジュエリーに銀細工が伝わった1800年代の製法を、そのまま再現すること。
今の銀細工は、均一に圧延された銀板から始まるのが普通です。でも彼は、インゴット(銀の塊)を自ら叩いて延ばすところから始めます。叩かれた銀には、銀板にはない密度の揺らぎと銀磨の痕が残る。石もすべて手でカットするから、機械カットのように均一ではなく、光がわずかに揺れる。
「古びた顔」の正体は、この手間そのものなのだと思います。刻印は小さく「JF」とだけ。

当店には、彼のカフが二本あります。どちらもヴィンテージです。
一本は、アームの外周に鋸の歯のようなエッジを刻んだ Serrated Edge Cuff。規則的なのに機械的に見えないのは、ひとつひとつの山の高さがほんの少しずつ違うから。
もう一本は、両端に向かい合う手のモチーフを配した Reaching Hands Cuff。伸ばされた手と手の間で、銀が静かに弧を描きます。この手が何を求めているのか、作家は多くを語っていません。だからこそ、身に着ける人が自分の意味を重ねられる余白がある。

「古く見えるように」作られた銀が、本当に長い時間をくぐってヴィンテージになった。作り手の意図した古びの上に、本物の年月が重なっている。Jock Favourのヴィンテージには、そういう二重の時間が流れています。
実物は商品一覧の「Bracelet」からご覧いただけます。